2021年5月2日日曜日

ドラえもんは全1339話

 「ドラえもん学」の提唱者である横山泰行先生は、藤子不二雄の出身地である富山にある富山大学の名誉教授で、教育学博士でもあります。彼は、従来のドラえもん研究で欠落していたとされる、ドラえもんの原作漫画作品における登場人物やひみつ道具などの登場頻度の計量など、データ収集と分析に特化した研究手法で、ドラえもんの新たな魅力を探るといった研究を行っています。

当然、『ドラえもん』の作品をデータ化するので、基本的な情報はもちろん、登場人物の登場コマ数なども、調査して結論を出しています。このような『ドラえもん』のデータ化には、僕も憧れていて、それが僕の横山先生を尊敬できる理由なのです。

それはともかく、実は横山先生は、ドラえもんの「全話数」について、1345話としています。そして、その内訳を次のようにしているという訳です。

  • 『小学一年生』:187話
  • 『小学二年生』:203話
  • 『小学三年生』:233話(3回に分けて連載された「ガラパ星から来た男」を1話としてカウント。小学四年生と同時掲載)
  • 『小学四年生』:235話(「ガラパ星から来た男」を1話としてカウント。小学三年生と同時掲載)
  • 『小学五年生』:184話(23話は小学六年生と同時掲載)
  • 『小学六年生』:184話(23話は小学五年生と同時掲載)
  • 『てれびくん』:54話(うち、7話は別冊付録のもの)
  • 『小学館BOOK』:8話
  • 『少年サンデー増刊』:4話
  • 『月刊コロコロコミック』:21話(うち、17話は大長編ドラえもんを指す)
  • 〈てんとう虫コミックスアニメ版〉:1話
  • 『よいこ』:27話
  • 『幼稚園』:26話
  • 『入学準備小学一年生』:1話
  • 〈てんとう虫コミックス〉:1話
しかし、その数については、確かめることは相当の手間をかけることになり、一般にも多くの人が横山先生の計測結果を引用して、「1345話」としているのです。

そこで僕も、この1345話という数字が正しいか、ドラえもんは全部で何話あるのかということを突き止めるべく、統計をとって調べてみました。


1.調査方法

『ドラえもん』全話の総数を調べるためには、「てんとう虫コミックス」など単行本に収録されている話を単に計測するだけでは、当然単行本未収録の作品だって存在するのですから、不正確な結論が出て来てしまいます。ですから、ドラえもんのエピソード一つ一つが、いつどこで最初に発表されたかを示すデータ、すなわち初出を調べる必要があるのです。

要するに、先に挙げた横山先生の分類のように、「小学一年生」などの作品が掲載された雑誌や、「1970年1月号」などのいつ掲載されたかを追っていけばいいという訳です。

例えば、てんコミ19巻に収録されている『海に入らず海底を散歩する方法』であれば、

「小学六年生」1978年8月号

ということになります。


2.調査対象

「全話を調査する」といっても、どの話を全話の中にカウントして、どの話をカウントしないかによって、結論が変わってしまうのは当然のことです。ですから、『ドラえもん』の全話を次のように定義します。

・藤子・F・不二雄が直接執筆して、少年雑誌に発表された原作漫画作品

とします。そのうえで、次に掲げる特殊な事例については、このように処置します。

  • 『のび太の恐竜』は、短編版と大長編版をそれぞれ1話としてカウント
  • 『ガラパ星からきた男』は1話としてカウント
  • ストーリー性の無い『ドラえもん大事典』『ドラえもん誕生』などはカウントしない
  • 『道路光線』『さよならハンカチ』『シューズセット』『人間そっくりたまご』はそれぞれ1話としてカウント
  • 複数の学年誌に同時掲載された場合は、最も高学年の雑誌のみに掲載されたと見做してカウント
  • 『大長編ドラえもん』に関しては、遺稿の『のび太のネジ巻き冒険都市』も含めて、藤子・F・不二雄が執筆した17話のみをカウント
これでひとまず計測したいと思います。


3.データ収集

まず、雑誌ごとに見ていくことが適切です。青字は同時連載を示しています。

(i)小学一年生

学年誌「小学一年生」に掲載された短編は

3(1969年度)+12*4(1970~1973年度)+1(1974年度)+7(1975年度)+12*10(1976~1985年度)+5(1986年度)+2(1987年度)+1(1990年度)=187話

となります。


(ii)小学二年生

学年誌「小学二年生」に掲載された短編は

3(1969年度)+12*7(1970~1976年度)+13(1977年度)+12*8(1978~1985年度)+5(1986年度)+2(1987年度)=203話

となります。


(iii)小学三年生

学年誌「小学三年生」に掲載された中短編は

3(1969年度)+12*10(1970~1979年度)+15(1980年度)+14(1981年度)+12*4(1982~1985年度)+8(1986年度)+2(1987年度)+11+1(1989年度)+8+2(1990年度)+1(1991年度)=229話+4

となります。


(iv)小学四年生

学年誌「小学四年生」に掲載された中短編は

3(1969年度)+12*7(1970~1976年度)+13(1977年度)+12*8(1978~1985年度)+4(1986年度)+2(1987年度)+10(1988年度)+12(1989年度)+10(1990年度)+1(1991年度)+1(1994年度)235話+1

となります。


(v)小学五年生

学年誌「小学五年生」に掲載された中短編は

12*13(1973~1985年度)+4(1986年度)+1(1987年度)+12(1989年度)+10(1990年度)+1(1994年度)162話+22

となります。


(vi)小学六年生

学年誌「小学六年生」に掲載された短編は

12*13(1973~1985年度)+4(1986年度)+1(1987年度)+12(1989年度)+10(1990年度)183話

となります。


(vii)幼稚園

幼年誌「幼稚園」に掲載された短編は

3(1969年度)+12(1970年度)+2(1972年度)+9(1973年度)=26話

となります。


(viii)よいこ

幼年誌「よいこ」に掲載された短編は

3(1969年度)+12(1970年度)+1(1971年度)+4(1972年度)+7(1973年度)=27話

となります。


(ix)入学準備小学一年生

雑誌「入学準備小学一年生」に掲載された短編は

1(1978年春)=1話

となります。


(x)てれびくん別冊付録

雑誌「てれびくん」の別冊付録に掲載された短編は

4(1976年度)+3(1977年度)=7話

となります。


(xi)てれびくん

雑誌「てれびくん」に掲載された短編は

11(1979年度)+12*3(1980~1982年度)=47話

となります。


(xii)小学館BOOK

雑誌「小学館BOOK」に掲載された短編は

3(1973年度)=3話

となります。


(xiii)小学生ブック

雑誌「小学生ブック」に掲載された短編は

5(1974年度)=5話

となります。


(xiv)少年サンデー増刊号

雑誌「少年サンデー増刊号」に掲載された短編は

1(1975年度)+3(1976年度)=4話

となります。


(xv)月刊コロコロコミック

雑誌「月刊コロコロコミック」に掲載された短編は

2(1979年度)+1(1984年度)3話

となります。


以上が『ドラえもん』の中短編を連載した雑誌です。これらに大長編17話を加えます。


4.データ分析

データ収集で集めたデータを並べます。

  • 小学一年生:187話
  • 小学二年生:203話
  • 小学三年生:229話
  • 小学四年生:235話
  • 小学五年生:162話
  • 小学六年生:183話
  • 幼稚園:26話
  • よいこ:27話
  • 入学準備小学一年生:1話
  • てれびくん別冊付録:7話
  • てれびくん:47話
  • 小学館BOOK:3話
  • 小学生ブック:5話
  • 少年サンデー増刊号:4話
  • 月刊コロコロコミック:3話
  • 大長編ドラえもん:17話

ということで、187+203+229+235+162+183+26+27+1+7+47+3+5+4+3+17=1339話です!!

横山先生の出した結論と、違う結果が出てしまいました。

違う結果が出た要因としては、同時連載の扱いや、どの短編を1話と見做すかで違いが生じたのかもしれません。

ただ、僕にも計測の精度の自信はありますし、いちおうこれを結論とさせていただきたいと思います。


5.余談

  • たびたび「ドラえもんは全45巻1345話である」と言われるが、これは誤りである。「全45巻」というのは、『ドラえもん』の中短編を収録した最もよく知られている単行本「てんとう虫コミックス」の全巻数であって、全821話が収録されている。そこに収録されていない短編も少なからず存在するので、言い換えるならば「全26巻1345話」ないし「全26巻1339話」が適切である。この場合の「全26巻」とは、全ての『ドラえもん』の原作漫画作品を収録した「藤子・F・不二雄大全集」の巻数である。
  • ドラえもんのアニメエピソードは何話あるのか。日本テレビ版は52話、大山版は1817話、そして水田版は2020年度終了時点までで1136話である。つまり、2020年度終了時点での総話数は3005話である。すると、第1131話『精霊よびだしうでわ』がドラえもん通算3000話となる。テレビ朝日版のみで考えれば、今年秋頃に3000話(水田版1183話)を迎える見通しである。

(2021.5.2)


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