2021年8月13日金曜日

設計紙で秘密基地を!【ドラえもん傑作ファイル・第6回】

 約2か月ぶりの更新となりました【ドラえもん傑作ファイル】ですが、今回は「秘密基地」をテーマに、この話『設計紙で秘密基地を!』をお送りしていきたいと思います。

●基本データ
初出:「てれびくん」1980年1月号『地下工事マシン』
単行本:てんとう虫コミックス「ドラえもん」第20巻第1話
大全集:第19巻第9話
アニメ化:1987年『のび太の秘密基地』、2015年『秘密基地で世界を守れ!』

▲以下ネタバレ注意!


1.あらすじ

のび太は裏山のどこかに大きな洞穴を発見した。彼はそこを自分だけの"秘密"基地にしようと企み、ラーメンや漫画などを家から持ち出して、その秘密基地へ急ぐ。ところが、調子に乗ってそこへ向かう道中、「誰にも内緒のボクだけの秘密基地~!」と大きな声で口に出してしまったため、次の瞬間、その裏山の洞穴には、のび太の他、それを聞いていたジャイアンとスネ夫も付いて来ることとなった。

裏山の洞穴を見て、ジャイアンとスネ夫は、自分たちの秘密基地にしようと言い出し、結果のび太はひそひそと帰っていった。泣き付くのび太に、ドラえもんは「設計紙」と「地下工事マシン」を出す。まず、設計紙に好きな秘密基地の間取りを書き込み、それを地下工事マシンに投入すると、すぐさまその通りに秘密基地を地下に掘ってくれるというのだ。

早速ドラえもんとのび太は、昼寝部屋や台所、居間、倉庫、そして「司令室」も設計紙に盛り込み、地下工事マシンで野比家の地下に秘密基地を建造。家の庭が秘密基地への入り口になっていて、そこから階段になって地下へもぐる。秘密基地の部屋は非常に広く、快適で、寝心地のいいベッドや、カップラーメンを作れる台所など、のび太の理想の施設が整っている。

ドラえもんはのび太を司令室に案内する。司令室には、目玉型のカメラに映し出された光景が映るモニターや、任意の相手に発射できるミサイルが備わっている。このカメラは、壁でも土の中でも自由に通り抜けることが出来るし、早速のび太は先ほどジャイアンたちに奪われた洞穴を見てみることにした。

ジャイアンとスネ夫は、秘密基地開設のパーティーと言わんばかりに、音楽を聴き、そしてジュースを乾杯しながら飲んでいる。おまけにのび太のことまで馬鹿にしたので、彼は悔しがる。そこで、ドラえもんはのび太にミサイルを撃ち込むことを提案する。ミサイルの種類は様々で、「ドロンコ」「クシャミ」「ベトベト」「カユイカユイ」などがあることを彼は紹介した。

のび太は、まず「ドロンコミサイル」を取り出し、その前に、2人にマイクで一分以内にそこを立ち退くことを警告する。しかし案の定2人は警告を無視。そのままミサイルによって彼らを全身泥だらけにして、洞穴から追い出すことに成功した。

その後、のび太は序でにしずかの様子も見てみることにした。するとなんと、彼女は不良学生たちに取り囲まれていた。のび太は彼女を助けるべく、彼らめがけて今度は「クシャミミサイル」を発射。見事命中し、不良学生たちはクシャミが止まらず、その場を退散した。

満足して、カメラを家に帰らせたのび太だったが、自分の部屋に玉子がいるのを発見。しかも、あろうことか彼女は彼の机の引き出しを開けて、自身の0点の答案を発掘し、激怒していたのだ。ところが、のび太は他人の引き出しを勝手に開けるのが悪いとして、彼女に「ゲラゲラミサイル」を発射。当然今度も命中し、玉子は笑いが止まらなくなり、退散させることに成功。

その間にのび太はその0点の答案を取り返しに秘密基地を出る。しかし、のび太が秘密基地の出入り口を開けっぱなしにしていたせいで、玉子がそれを発見。ドラえもんが独りいる司令室に乗り込み、そのまま占領。玉子とのび太の立場は逆転し、玉子は司令室から彼に机に座るよう、ミサイル発射の警告付きで命令する。

これにはさすがのドラえもんも何もできなかった。


2.考察

この短編とアニメとは、僕が『ペンシル・ミサイルと自動しかえしレーダー』(四82.10/+5.17/CW12.44)と、この後【ドラえもん傑作ファイル】内で紹介することになるであろう別の短編・アニメとに出会うまでは、『ドラえもん』の作品の中で最も好みのエピソードであった。

というのも、やはりリアルな「秘密基地」を作るようなエピソードは、この話くらいしかないからだ。街中の誰でも万能なカメラで監視できる…「スパイ衛星」の回にも通じるが、やはり監視は支配欲に直結する。少し、文体が重くなってしまったが、ドラえもんの道具を使えば、誰でも人を監視し、支配できるのも、小学生の「夢」といったところだろう。

監視だけでなく、この秘密基地を使えば、さまざまなミサイルを発射し、あるいは発射前に警告することが出来る。警告された相手は、相手がどこからしゃべっているのか全く分からないので、混乱し、あるいは驚きおののく。そして、ミサイルを撃つこちら側は、優越感に浸るのだ。

この話に登場する「地下工事マシン」だが、別にこういった監視機能を持つ秘密基地だけでなく、単純に地下に住居を構えることも出来る。通常、地下に建造物を作るには、掘削した土砂を運び出さないといけないので、当然時間やお金、手間がかかる。しかし、この道具は数秒で工事を完了しているのだ。

これはある種の技術革新で、未来世界(22世紀の世界)では、やはりこの道具が普及して、人類は地上だけでなく地下に住むことも容易になったということだろうか。

話のオチは、「のび太が自分の秘密基地を乗っ取られる」という結末であった。当初、自分で見つけた洞穴の秘密基地も、冒頭でジャイアンとスネ夫に乗っ取られているので、見事に話の最初と最後が対応していると言っていいだろう。また、のび太の「開けっ放し癖」も、結局秘密基地を奪われることに響いた。

あと、のび太が玉子に「ゲラゲラミサイル」を発射することを選んだのは失策だったろう。このミサイルは、相手を単に笑い苦しませるくらいの効果しかなく、ドロドロにしたりべとべとにしたり、相手に決定的なダメージを与える面では性能に欠けている。そのため、玉子は早期に復帰し、秘密基地の入り口を突き止めたという訳だ。


今回は、ここで切り上げさせていただく。

(2021.8.13)


前回:『ペンシル・ミサイルと自動しかえしレーダー』

次回:『ラジ難チュー難の相?』


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