2021年5月29日土曜日

一括対比で大衆を欺瞞する話術【未来ノートコラムA・第1回】

 こんにちは。「偽りの平和主義」シリーズが無事完結し、次は何の記事を書こうかな…と思ったところで、そうだ、ハンナ・アーレントに関する話題を扱っていこうということで、新シリーズを書き始めようと考えたのですが、だいぶ文章がつまらなくなったり、書いているうちに退屈になったりして、いつもの調子が出ないので、今後は「偽りの平和主義」とは異なる、「定期更新」という形で、形式が少し緩いシリーズを書き始めていこうと思います。

その名も「ロゴスと情報戦」。

2020年のコロナ危機から始まった、米中両国の情報戦は世界を巻き込み、そして日米など言論統制が行われていない国家は、その反面誤情報が頻繁に流通するようになりました。しかし、このような「誤情報」、あるいは「偏向」が仮にあったとしても、それを理性でもって解析していけば、必ず素人でも判別できるのではと考えました。このシリーズでは、情報戦を論理で制するための参考として、読んでいただければ幸いです。

2021年5月17日月曜日

時を生きる

 人は、いつか生まれていつか死にます。これは、人類だけでなく全ての生き物にとっての不変の掟です。しかし、生き物の中で、「時間」という概念を知っているのは、知能を持っている人間だけです。

医師の日野原重明氏は、1980年代からこどもたちに「いのちの授業」を展開するようになりました。というのも、彼は1970年に発生した「よど号ハイジャック事件」の遭難者で、この事件に遭ったのをきっかけに、自他の命について考えるようになったといいます。

そして、日野原医師は、「いのち」の正体を「時間」だと捉えていました。少し違和感を感じるかもしれませんが、「寿命」というのが「××年」と言えることを考えれば、必然的なものです。

2021年5月16日日曜日

【偽りの平和主義と戦う】要約

 僕の全10回にわたってまとめ上げた「偽りの平和主義と戦う」シリーズなのですが、文章量が非常に多く、いちいち読むのがめんどくさいという人のために、要約文を作ってみました。

この要約文には、第1回から第9回までの記事の最後にある「まとめ①から⑨」を軸として作られた、結論だけの文章が載っています。当然、その結論に至るまでの様々な論理は、この記事では省かせていただいているので、ご了承ください。もし、詳細を知りたければ、その該当記事を読んでください。

【偽りの平和主義と戦う 最終回】希望

 さて、前回は、現在の米中対立の構図が、おおまかに見れば「自由主義国家」対「人権弾圧国家」の対立であり、後者は、かつてレーガンが言ったような「悪の帝国」である中華人民共和国が含まれるということをお伝えしました。

そして、この回において私の言いたいことといえば、それは米中対立ないし米中冷戦が、戦争に発展する可能性があるということです。具体的にどのような経緯で戦争が発生するのか、予想されるシナリオを紹介します。

2021年5月10日月曜日

ぞうとおじさん【ドラえもん傑作ファイル・第3回】

 今回取り上げるのは、戦時下で殺処分された象を描いた「かわいそうなぞう」という童話を元にした、原作作品です。暗い話題を取り上げつつ、コメディカルなシーンも混ぜて戦時下の人々の様子を伝える良作です。それについてあらすじと感想、考察を述べていこうかと思います。

なお、今回は政治的見解が考察に含まれているのでご注意ください。

●基本データ●
初出:「小学三年生」1973年8月号
単行本:てんとう虫コミックス第5巻第18話(最終話)
大全集:第4巻第29話
アニメ化:1980年『ゾウとおじさん』、2007年、2017年

▲以下ネタバレ注意!

【偽りの平和主義と戦う 第9回】米中対立をどう見るか

 2017年に米国大統領に就任したトランプ氏は、自国第一主義や反グローバリズムを掲げ、それによってEUなどのヨーロッパ諸国との関係が冷え込んでいきました。特に、ドイツの首相であるアンゲラ・メルケルは、彼を厳しく批判したのです。

そして、2020年。中国から広まったとされる感染症COVID-19が、米国にも到達して広まるようになると、今度はトランプ大統領(当時)は次第に中国共産党や中華人民共和国の政府などの、「隠ぺい体質」を批判するようになってきました。そうして、貿易問題から米中の対立がエスカレートしてきたのです。

そうなると、これまで米国と距離をとってきたEU諸国もうんざりです。両国の関係「悪化」に巻き込まれたくなかったからです。多くの、こういったEUなどの国々は、これを超大国同士の醜い争い、すなわち新冷戦と捉えた訳です。

2021年5月9日日曜日

【偽りの平和主義と戦う 第8回】平和運動の幻想

 第2回と第6回で挙げた、2021.2.1に発生したミャンマーでの国軍によるクーデターへの、国際社会の反応は、非常に厳しいものでした。日本、米国、そしてインドは、アウンサン・スー・チー国家顧問率いる民主政権(NLD政権)を支持する主旨の声明を出し、国際連合のアントニオ・グテーレス事務総長は、クーデターを確実に失敗させるという決意をにじませました(2/4)。実際に、国軍は治安維持という名目で、これに抗議する大勢の人々を殺害し、自由を弾圧していたのです。このように非常に異常なことがミャンマーで発生している中で、それでも反応しなかった国・組織が2つあります。

ポリティカル・コレクトネス[政治的妥当性]をより強く、そしてより良いものに

 皆さんはポリティカル・コレクトネスという言葉を知っていますか?

ポリティカル・コレクトネスは「政治的妥当性」「政治的適正」「政治的正確性」「ポリコレ」「PC」とも呼ばれ、社会で生活を営んでいる様々な立場の人間にも不快感を感じさせず受け入れられるような言語使用・政策・文化をさします。現在は、それらを実現させようと米国のリベラル派、すなわち左派が行動していますが、この「ポリコレ」の言葉には、右派からの侮蔑的意味合いもあります。

構図的に簡単に説明すれば、米国の左派は、基本的に人種や宗教、文化に寛容な立場の人々が多いので、このポリコレを推進しようとし、一方で右派は、米国の伝統的価値観や、受け継がれてきた宗教(キリスト教、まれにユダヤ教)を守ろうとする立場なので、言語表現などの変革が行われるポリコレに不快感を抱いている人が多くいます。そしてこのポリコレを巡る概念は、米国から世界に広がって様々な議論を巻き起こしているのです。

今回は、このポリコレについて探っていきたいと思います。

2021年5月6日木曜日

具象化鏡【ドラえもん傑作ファイル・第2回】

 「具象化」とは、「ぐしょうか」と読み、大辞林によれば

観念や思想を具体的な形にあらわすこと。

という意味のようです。今回は、実際世の中に物質として存在しない、概念だけの「物体でないもの」を、「形を持った物」にして表現してくれる「具象化鏡」(ぐしょうかきょう)という道具が登場する短編について、あらすじ考察を述べていこうと思います。

●基本データ●
初出:「小学六年生」1986年3月号(最終話)
単行本:てんとう虫コミックス第39巻第20話
大全集:第13巻第72話(最終話)
アニメ化:1986年、2010年『のび太の耳にタコができる話』、2018年『キツネにつままれた話』

▲以下ネタバレ注意!

【偽りの平和主義と戦う 第7回】民主主義の覚醒

 さて、前回僕が言いたかったのは、もし自分の住んでいる国が独裁国家になった時に、独裁者が武力を用いて我々の自由を奪おうとするのなら、まわりの人たちと一緒に武器をとって彼らに抵抗するべきだ、ということでした。

でも、やはり暴力を使うのは気が引けるところですよね。暴力を使って、抵抗して死んでしまったら元も子もないとあなたは思うのではないでしょうか。更には、暴力を使えば当然相手側にも死傷者が出たりして、平和的精神に反するのではと思いますよね。

でも、あなたがそう思うのは、もしかしたらこの平和で自由が維持されているこの国・日本にずっと住んでいて、それが当たり前だということに慣れてしまい、自由や民主主義のありがたみが薄れてきてるからではありませんか?

2021年5月5日水曜日

水田版アニメの評価について―「アンチわさドラ」へのメッセージ


1.前史

ドラえもんは、1973年に初めて日本テレビ系列のテレビアニメで放映されました。しかし、この時は、アニメの制作会社の経営不調を理由にわずか6か月で打ち切られてしまいました。この頃はまだあまりドラえもんの単行本は発売されておらず、当時の新聞記事を見てもあまり知名度が高くなかったことが分かります。この日本テレビ版アニメは、原作の内容がかなりアレンジされていたようで、どうやら藤本氏もこれはオレのドラえもんじゃないなどとあまり評価はしていなかったように窺えます(注1)。

【偽りの平和主義と戦う 第6回】自由人の力

 前回は、独裁者が誕生するには、次の2通りがあるかと言って紹介したと思います。

1.人々の絶大な支持を得て、権力を握った者
2.圧倒的な力を背景に、権力を握った者

今回は、このうちの「2」についてと、結局その独裁者から、われわれが人間らしく生きるために必要な「自由」と「民主主義」をどのようにして守ればいいのか、どのような信条を以って守ればいいのかということについて、実例を通じて、僕自身の説明したいと思います。

2021年5月4日火曜日

【偽りの平和主義と戦う 第5回】独裁者に迎合する悪

 前回は、国の体制は、資本主義であろうと社会主義であろうと、とやかく人間ひとりひとりがみな人間らしく自由に生きられるか否かで良し悪しが決まってくる、といったような内容の説明をしました。そのうえで、第3回補足では、国の指導者や国家は独裁者であろうとそうでなかろうとに関わらず、国民に責任を負っている、といった趣旨の説明をしました。両回ご理解いただけたでしょうか。

今回は、もしあなたの住んでいる国が、独裁国家になってしまった時に、どうすればいいかというのを、私論ですが説明させていただきます。

2021年5月2日日曜日

ドラえもんは全1339話

 「ドラえもん学」の提唱者である横山泰行先生は、藤子不二雄の出身地である富山にある富山大学の名誉教授で、教育学博士でもあります。彼は、従来のドラえもん研究で欠落していたとされる、ドラえもんの原作漫画作品における登場人物やひみつ道具などの登場頻度の計量など、データ収集と分析に特化した研究手法で、ドラえもんの新たな魅力を探るといった研究を行っています。

当然、『ドラえもん』の作品をデータ化するので、基本的な情報はもちろん、登場人物の登場コマ数なども、調査して結論を出しています。このような『ドラえもん』のデータ化には、僕も憧れていて、それが僕の横山先生を尊敬できる理由なのです。

それはともかく、実は横山先生は、ドラえもんの「全話数」について、1345話としています。そして、その内訳を次のようにしているという訳です。

2021年5月1日土曜日

【偽りの平和主義と戦う 第4回】各国のイデオロギー

※この記事は解説系が中心です。理解のある方はここを飛ばして次回を読んでも構いません。 

さて、前回はさまざまなイデオロギーのなかでも、特に自由主義は、世界の中でも最も普遍的な(=認められるべき)価値観(=イデオロギー)だということを紹介しました。この理由については、前回説明した通りになります。大雑把にいけば、人間は誰でも生まれた時からそれを持っていて、他人のせいでそれが奪われる、なんてことはとても不合理だから、ということになります。自由を奪われれば、人は人間らしく生きられません。なお、「自由主義」や「民主主義」が他のイデオロギーより秀ており、他の考えがみんなダメなんだ、ということでは全くありません。「普遍的」というのは、当たり前であるという意味で、「唯一」という意味ではないのです。

そして前回、「イデオロギー」には、「資本主義」「社会主義」「共産主義」など他にも様々なものがあると言いました。今回は、具体的にどこの国が、どのようなイデオロギーを掲げていたのかというのを説明して、分かり易くしたいと思っております。

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