歴史上起こった大犯罪や大惨事。それを犯した者は非難されるべきでありますが、一方でそれらの出来事は歴史のほんの一齣に過ぎないとも言えます。何もしていなければ、人間は過ちを繰り返します。そうならないためには、その出来事を空前絶後のものと捉えるのは非常に愚かな手段です。我々は歴史から何をどのように学べば良いのでしょうか。その答えを3つの話題から探っていきます。
アーレント『エルサレムのアイヒマン』反響に見る、犯罪がなぜ繰り返されるのかという問いへの答え
ハンナ・アーレントは、第二次世界大戦前のドイツに生まれたユダヤ人で、半生をそこで過ごし、その後ナチ党がドイツを支配するようになると、米国へと亡命しました。戦後、ナチ党が滅びた後は、当時のドイツの国家主義と、ファシズム的な全体主義を考察し、『全体主義の起源』という本を著しました。そこでは、近代史上稀にみる大虐殺をなぜナチス・ドイツは実行できたのか、そして独裁者と被支配民との間の意外な関係性について述べられました。