今月17日に公示された、実質的に日本のトップ内閣総理大臣を決める選挙である自民党総裁選挙も、大詰めを迎えている。私は、この未来時事評論第7回と第8回で自民党総裁選挙について扱ったが、今回はこの第9回においても、これを扱おうと思う。
今回は、もう選挙結果が判明するまであと3日ということで、これ以降の情勢の変動も幅が狭いと予測するので、思い切って「結果予想」に踏み込んでしまおうと考えている。多くのメディア等で「今回の総裁選は最も読めない」と言われる一方で、すでに情勢状況が固まりつつあるので、今から言う私の予想はかなりの確信を持って公表したい。
各候補がどれほど票を獲得するか
自民党総裁選は、国会議員1人1票の「議員票」計382票と、それと同数の382票にその他党員の投票をドント式で配分する「党員票」、合わせて764票で争われる。一方で、もし一回目の投票で過半数383票以上を獲得した候補者がいなかった場合、1位と2位で決選投票が行われる。この場合、国会議員票383票はそのままだが、一方で党員票は地方票47票となり、割合が減る。今回は、4人の候補者が乱立する状態のため、決選投票になるのは必至と見られる。
では、国会議員票、党員票それぞれでどの候補がどれくらいとる見込みなのか。それらは世論調査で分かる。
まず、国会議員票についてだが、これは政治アナリストである大濱崎卓真氏が各議員の支持表明などをGoogleスプレッドシートにまとめてくれている。こちらの「自民党総裁選2021_議員票動向」を参照させていただきたい。それによれば、2021.9.26の18時現在で、岸田氏99人、河野氏84人、高市氏69人、野田氏21人ということになる。合計273人(/382人)が態度を表明していることになる。このままの比率で行くとするならば、国会議員票では比でだいたい岸田氏3.5、河野氏3、高市氏2.5、野田氏1、ということになる。
次に、一般党員票についでだが、その動向を最も正確に反映させたのが、自民党支持層への調査だろう。こちらの「JNN系(Yahoo!ニュース):総裁選 河野氏リードか、自民支持層47%が支持」をご覧いただければ分かると思うが、これに比にすれば、岸田氏2、河野氏4.5、高市氏3、野田氏0.5となる。
議員票と党員票は同数なので、これらの今出した比を単純に足し合わせると、岸田氏5.5、河野氏7.5、高市氏5.5、野田氏1.5となる。どの候補も過半数を取れず、決選投票になることは一目瞭然である他、岸田氏と高市氏が熾烈な2位争いをしていることがこの数字からも理解できる。
決選投票に誰が進むのかが焦点となるが、まずは仮に岸田氏が進出した場合を考えてみよう。岸田氏は議員票では優勢なうえ、1回目に高市氏に入れた議員たちの票が、彼女と対極に位置するようなリベラル的な河野氏に入るとは到底思えず、河野氏に対する岸田氏のリードは変わらないだろう。地方票は割合が急激に減らされるため、河野氏人気の影響力が少なくなることを考えると、岸田氏が勝利するのは確実だろう。つまり、決選投票が「河野vs岸田」という構図になった場合、岸田氏が勝利する確率は100%である。
逆に、高市氏が決選投票に進むと考えた場合、従来の議員票や地方票では河野氏がリードしているため、河野氏が勝利する可能性が高い。しかし、「安倍フォン」と呼ばれる安倍氏の各国会議員の高市氏への積極的な支持呼びかけがどこまで功を奏するかによっては、高市氏が河野氏を上回るという可能性は完全に否めない。決選投票が「河野vs高市」の構図になった場合、河野氏が勝利する確率はだいたい75%、高市氏が勝利する確率は25%である。
最大の問題は、決選投票で誰が1位河野氏に対して「挑戦権」を得るかだろう。現時点では、岸田氏か高市氏か情勢がどちらに転ぶかが分からない。どちらにも2位になるべき要素がある。つまり、現時点では五分五分ということだ。
以上のことを総まとめすれば、各候補が勝利する確率は、岸田氏50%、河野氏37%、高市氏12%、野田氏0%となる。本命岸田、対抗河野、大穴高市、超大穴野田、といったところだろうか。
まだまだ存在する不安定要素
とまあここまで書き続けてきた訳だが、不安なのは、岸田氏は決選投票に出られるか否かで勝利確率が100%か0%かのどちらかになるということが、今度の最大の不安定要素となる。岸田氏が2位になれないシナリオと言えば、当然ながら高市氏が2位になるシナリオ、つまり高市氏が急速な追い上げを見せるシナリオだ。ちなみに、8日前の18日7時現在では、先に挙げた大濱崎氏のデータによれば、支持表明は岸田氏77人、河野氏65人、高市氏51人となっており、8日後の今と比べると、岸田氏+22、河野氏+19、高市氏+13で、特に高市氏が追い上げているという印象はまだ見られない。
しかし、党員票の動向を含めても、高市氏は既に岸田氏に並んでいる善戦を見せている以上、情勢は予断を許さないのだ。50%と12%が接戦を繰り広げているという奇妙な事態が起こっている。
また、先ほどのJNNの支持層への世論調査が、どれだけの正確性を持っているかも疑問だ。調査精度という問題ではなくて、「支持層への調査」がどれだけ「党員の動向」を反映しているか、という問題だ。ただ、直接の信頼できる調査が行われていないので、これ以上の動向を調べるというのは困難であった。
高市氏支持者について
最後に、結果予想とは関係ない話だが、最近の高市氏の支持者の動向についてお話させて頂きたい。
周知のとおり、高市氏は立候補者の中でも最も保守的である。悪く言えば、「中道から離れている」ということになり、その支持者たちも急進的な者が多く、より行動的である。総裁選が始まってから徐々にインターネットやSNS上で言論活動を活発にしてきているようで、例えばYahoo!ニュースのコメント欄を見ても、高市氏支持のコメントが上位に来ている。
また、高市氏支持者の多くは、昨年の大統領選挙で日本からトランプを支持していたネット右翼が含まれていると見る。また、一部の高市氏支持者は、高市氏本人とトランプを重ねて見ていたり、あるいはマスメディアが高市氏を冷遇していると主張したりしている。また、彼女の対立候補である河野氏が人気であるという結果になった世論調査に対して、別の高市氏有利な「調査」を提示するツイートやコメントもあるようだ。他にも、河野氏を批判したり、悪く行けば中傷したりなども行っているそうだ。
ただ、マスメディアの調査が偏向だとか、誤っているなどという彼らの指摘については、私は当てはまらないと考えている。
例えば、YouTube上でTBSが行った調査では、高市氏が50%のネット上の支持を獲得したそうだ。他にも、ネット上で行われた調査が高市氏(が河野氏より)優勢だったようだ。それらを根拠に、高市氏支持者の一部は、「マスメディアの(河野氏優勢の結果の)世論調査は、高市氏を総理にさせないために作られた偏向ないし捏造だ」と口をそろえて主張しているらしい。
しかし、果たしてTBS主催のYouTube上の調査や、他のネット上の調査が正確性を伴っているかと言われれば、そうではないと感じる。先に挙げたように、高市氏支持者の多数は、河野氏やほかの候補者の支持者よりずっと急進的かつ行動的であり、これらの調査があると聞けば必ず駆けつけるような人々であるとみえる。「ネット右翼は多いのにネット左翼は少ない」理由とだいたい同じである。
以上、今回の自民党総裁選について今後の予想などを書き記した。最後まで読んで頂けたのなら幸いだ。今後、情勢の変動によっては、追記をする可能性もある。
(2021.9.26)
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