2021年10月9日土曜日

岸田内閣発足【未来ノートコラムB・第6回】

 前回の投稿から2週間あまりが過ぎてしまいましたが、健在です。前回の「未来時事評論」は何をしたかというと、自民党総裁選挙の結果予想をしました。具体的な予想としては、各候補の勝利確率として岸田氏50%、河野氏37%、高市氏12%、野田氏0%とし、残る不安定要素として、高市氏の追い上げや安倍フォン、そして党員投票関連の世論調査の正確性への疑問などを挙げたと思います。

結果は当然、私が50%とと予測してきた岸田氏が勝利しました。ただ、私の予想通りと言いたいところがどうも言えないのです。原因は主に二点、岸田氏の一回目投票での第一位獲得、そして高市氏の議員票での躍進です。

具体的な投票結果を見てみましょう。

●第一回投票

  • 河野太郎=255票(86+169)
  • 岸田文雄=256票(146+110)
  • 高市早苗=188票(114+74)
  • 野田聖子=63票(34+29)

●決選投票

  • 河野太郎=170票(131+39)
  • 岸田文雄=257票(249+8)

まず、国会議員票ですが、前回第9回に紹介した、選挙アナリストの大濱崎卓真氏が集計された2021.9.26現在での国会議員動向なのですが、岸田氏99人、河野氏84人、高市氏69人、野田氏21人とされていました。これと実際の投票の結果(第一回投票)と比べてみると、岸田氏47増、高市氏45増、野田氏13増なのに対し、河野氏は2人しか国会議員が増えていないのですよね。明らかに、後半戦で議員票獲得で河野氏が失速したかが分かる数字となっています。

実は、総裁選が行われた9月29日時点で、総裁選予想の市場はだいたい岸田氏の「逆転」勝利が主流となっていて、この報道を見た国会議員たちが勝馬に乗ったことや、多くの議員たちが河野氏の改革姿勢を懸念したこと、そして安倍氏の影響力が終盤になって効果を上げたことなどが、今回の岸田高市躍進&河野失速につながったのかと考えるのが適しているようです。

次に、党員票なのですが、前回紹介したJNN系の世論調査(自民党支持層)の比は、岸田氏2、河野氏4.5、高市氏3、野田氏0.5となっていました。一方で、今回の党員票の比を見てみると、だいたい岸田氏3、河野氏4.5、高市氏2、野田氏0.5というふうになります。このJNNの自民党支持層=保守層への調査では、岸田氏よりも高市氏の方が人気なようでしたが、どうやら実際の結果と見比べてみると、そうでもないことが分かりました。

高市氏が2位を取る可能性はそこまで高くはなかったのですね。


岸田総理総裁の人事

岸田内閣の最初の内閣支持率を各社でみていきましょう。

  • NHK=49%
  • NNN/読売=56%
  • ANN=43%
  • 朝日=45%
  • JNN=58%
  • 毎日=49%
  • TXN/日経=59%
  • FNN/産経=62%
  • 時事=40%
  • 共同=55%

これを見ると、最低が時事通信の40%、最高が産経の62%となっています。かなり幅があるようですが、最初の支持率が6~7割を記録した去年の菅内閣発足時よりは明らかに低い値が出ているようです。

なぜこのように比較的ではありますが低い値が出たかと言えば、原因としては岸田内閣や自民党執行部等の人事で国民の疑念を買ったから、というのが主流な推測のようです。国民が全体的に違和感を覚えた人事としては、

  • 甘利明氏⇒党幹事長に起用
  • 麻生太郎氏⇒党副総裁に起用
  • 松野博一氏⇒内閣官房長官に起用
  • 河野太郎氏⇒党広報本部長に起用

これらが主かと考えます。甘利氏は、周知のとおり2016年に疑惑で閣僚を辞任した経験があり、時効が過ぎたとはいえ、未解決のままですから、当然野党や国民の間から不満が出てきます。また、自民党内の安倍・麻生・甘利各氏はそれぞれ互いに盟友であり、反二階(前幹事長)でつながっていることから、それぞれのイニシャルを取って3Aと呼ばれており、今回岸田氏は彼らの支援もあって総裁の地位を得ることが出来たことから、甘利氏の起用は3Aに配慮したものではないかとも受け止められたのです。

他にも、今まで3000日あまりにわたって戦後最長の財務大臣、そして副総理を務めてきた麻生氏は党副総裁、また、安倍氏が影響力を誇る細田市出身の松野氏を官房長官にそれぞれ起用したことも、やはり「3Aに配慮した人事」「論功行賞人事」として批判されたのかと思います。

更に、今回の総裁選で党員票の5割近くを獲得した、国民人気が健在の河野氏を、「党広報本部長」という役職に起用したのは、政界OBからも完全な冷や飯だとして、一部で批判もされました。確かに「人気」だからこそ選挙に向けた「広報」本部長なのかもしれませんが、だったら選挙対策委員長でも良かったのではないか、明らかな降格ではないかとも言われています。

他にも、主要閣僚で起用されたのは、若手もいますが、全体的に国民の知名度が低い人が多く、それが国民へのイメージの改善につながらなかったとも考えられます。このように、今回の人事にはがっかりだとか失望したとかいう意見が早々と政界周辺からネット上にまで出回っていますが、一方でまだ始まったばかりでもあるし、失望するには時期尚早すぎるのではと私は考えます。

副総裁に起用された麻生氏ですが、この「自民党副総裁」という役職は、名目上は総裁の時点なのですが、実質的な権限は幹事長の下位互換で、名誉職的な意味合いが強いです。80歳を超えて高齢な麻生氏ですが、前の副総裁の高村氏は、副総裁に就いたあと政界を退いているので、引退への花道を岸田氏が麻生氏に用意した、と考えるのが妥当でしょう。岸田氏は、麻生氏のメンツを傷つけず、よく「鈴をつけたな」と感じます。ですから、この人事は私は肯定的に評価したいです。

上記のように「3Aへの配慮が見え見えな人事」とも言われますが、一部の報道によれば、安倍氏は岸田氏の人事に対する不満をもらしているようです。実は、当初は官房長官に文部科学大臣で細田派、安倍氏の盟友である萩生田光一氏を起用するよう岸田氏に求めていたようですが(実際に萩生田氏を起用する方針だと誤報した新聞社が約一社ありましたが)、岸田氏は松野氏を起用しました。たしかに、松野氏は細田派ですが、安倍氏と距離を置いているということもあり、岸田氏による安倍氏の要求は簡単には受け入れまいという思いが伝わる人事かと思います。松野氏は知名度は低く、国民うけはしないと思いますが、今後の技量の発揮を見て評価したいと感じます。現時点では、私は否定的には受け止めません。


とまあざっくりと今回の岸田首相の誕生に関して私の感想を記してきました。今後加筆する可能性があるのでよろしくお願いします。

(2021.10.9)


前回:総裁選各候補の勝利確率と不安定要素

次回:衆院選2021に対する諸考察




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