2023年1月28日土曜日

SNSメディアの効用とストレス源性【未来ノートコラムA・第19回】

 Yahoo!ニューストピックにこんな記事が上がっていたので紹介する。

Yahoo!ニュース(NATIONAL GEOGRAPHIC):「昔より世の中は悪くなっている」 SNSの見過ぎでゆがむ認知、抜け出す方法は【科学で明かす身近ななぜ】

この記事によれば、人々がSNSニュースを見てストレスを感じるのは、実は人間が持っている、様々な危機に乗り遅れないようにしようとする本能が、認知を歪ませている結果だというのだ。これは人類の持つ動物的な習性のうちの一つで、不安を生じさせるようなネガティブな情報ほど、人は過敏に反応し、重く長期間にわたって受け止めるというのものだそうだ。それに加えて、マスメディアというものは、基本的に世間の問題点や負の側面を中心に報道する。これを通じて社会の改善を訴えようとしているからだ。逆に肯定的な報道は、否定的な報道よりも意味を為しにくい。

マスメディアの持つそのような性質や、人間の持つ本能的な特質というものは、現代以前から存在したものだ。ところが、現代社会において、SNSの発達が、人々に対し、これまで以上にマスメディアの流す否定的な情報に触れさせることを強要した結果、現代人はニュースを見ることによるストレスを感じやすくなってしまったのだ。今を生きる多くの人々は、この記事の見出しのように、「昔より世の中は悪くなっている」 と何となく感じているかもしれないが、それにはSNSの閲覧過多による悲観的な錯覚が含まれている可能性が高い

また、SNSを通じて情報を得た人々の中には、現実に起こっている様々な危機や負の現状を過剰評価して、極端な思想や信条を唱える集団に与してしまう人たちがいるかもしれない。それが現代で言うところの「ネトウヨ」であったり「Qアノン」であったりするような、孤立したネット集団なのではないかと私は思う。

SNSによって、前世紀よりもはるかに迅速に膨大な情報を得られる社会になった21世紀社会は、言論社会の透過性がより保障されやすくなるという意味では、進歩を得たと言えるだろう。しかし同時に、SNSとマスメディアの特質――SNSメディアが危機や社会問題など負の情報を中心に流すという性質――に気付いていない現代人は、「より多くの情報を得るのが良いことだ」というイデオロギーに基づき、ネガティブな情報を取り込み過ぎて、ストレスを感じてしまったり、必要以上に危機を煽るような言説を唱えたりしてしまっている現状があるのではないだろうか。

だから、社会問題に興味関心を持ってTwitterなどのSNSを利用する場合は、そのことを念頭に置いておかねばならないだろう。仮に利用中に不快に思ったことがあったとしても、そのまま深刻に捉える必要はあまり無いかもしれない。SNSのメディアには、不快な情報が多いかもしれないが、それはSNSの持つ性分と割り切った方がよい。SNSを閲覧しているうちに、社会問題を巡って深みにはまり、ストレスを感じたり、極論を唱えたりすることは、実に愚かで醜いことだ。


まとめ

  1. 人は不安や危機感を感じさせるようなネガティブな情報ほど過敏に受け止めがちである。
  2. マスメディアは社会の改善を訴えるため、基本的に否定的な情報を中心に報道する性質がある。
  3. SNSが発達したことにより、人々は今まで以上に多くの時間をニュース情報を得ることに費やすようになった。
  4. これら1、2、3の要因により、一部の人々はSNSメディアを通じて「世界の現状が元来よりも悪くなり続けている」と錯覚するようになり、その結果人々のSNS閲覧によるストレスが増大した。
  5. 人々がSNS社会の発達を通して社会不安を増大させるようになると、インターネット上に極端な思想や信条を唱える集団が現れるようになってくる可能性がある。

(2023.1.28)


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