2021年9月4日土曜日

自民党総裁選の軸は誰なのか【未来ノートコラムB・第4回】

この記事に書かれている情報は、現在のものと一部異なっています。最新情報をご確認ください。

昨日9月3日に、菅義偉首相は次の自由民主党総裁選挙に出馬しない意向を示し、事実上今月限りで退任することが決まりました。これまで、次の総裁選挙は、「菅vs岸田」の構図となると、私を含めて多くの人が予想してきましたが、今回の菅氏の表明により、全ては振り出しに戻ったと感じます。

それでは、次の日本を率いることとなるであろう、総理総裁は誰になるのか、菅氏以外なら誰が有力なのか、急遽この記事でまとめてみることにしました。

まず、下の読売新聞の記事を見てください。

読売新聞:菅首相が退陣表明、後任選びは岸田・河野・石破氏が軸か…衆院選は11月の公算

この記事において、今後行われる自由民主党総裁選挙は「すでに出馬を表明している岸田文雄・前政調会長(64)に加え、河野太郎行政・規制改革相(58)が立候補の意向を固めた。石破茂・元幹事長(64)も意欲を見せており、3人を中心に展開されそうだ」としています。

この3人の派閥と支援者を見てみます。まず、岸田氏ですが、彼は自らが領袖を務める「宏池会」通称岸田派に属しており、有力な支援者はいませんが、菅氏が不出馬を表明する前は、反菅の受け皿としてかなり注目されていて、二階幹事長を自民党職から降ろすべきだとするなどと言って、結果的にこれが菅氏の求心力低下につながったとも言えます。

次に河野氏ですが、彼は麻生副首相が領袖を務める「志公会」通称麻生派に属しています。彼は、菅氏からワクチン接種推進や、行政改革など、菅政権の目玉政策を多く担当してきたことから、国民からの印象もよく、とある世論調査で最も支持を得るなど、次期ないし後の日本の首相としてかなり注目されていた人物でした。彼は当初は菅氏を支持していましたが、その構図が一変すると自ら出馬すると表明し、すぐに菅氏も彼を支援するとしました。

そして、石破氏なのですが、彼は2012年、2018年、2020年の総裁選挙と、何回も自由民主党総裁選挙に立候補しては敗北するという道筋をたどってきた人でした。彼は、2020年までは「水月会」通称石破派の領袖を務めていましたが、当年の総裁選に敗れて以来、領袖を退きました。特に党内に有力な支援者はいませんが、国民や党員からの人気は根強いものと思われます。

さて、以上が上の読売新聞の記者が想定した「有力候補」でしたが、実は、非常に忘れている重要な人物が一人います。

それが、高市早苗前総務大臣です。

高市早苗は、日本国憲法において自衛隊を国防軍とすべきだと主張するなど、保守派の集う自民党の中でもかなりの強硬派として知られています。かつては自民党の派閥「清和政策研究会」(現:細田派)に所属していましたが、現在は無派閥です。しかし、政策的にも非常に近い、安倍前首相とは非常に馬が合い、彼は彼女がかつて所属していた清和政策研究会の実質的な領袖でもあります。清和政策研究会は、自民党最大の派閥ですから、安倍前首相の影響力は絶大なわけです。

そんな安倍氏と高市氏ですが、下の記事を見てください。

TBS:自民総裁選、安倍前首相が高市氏支援の意向

菅氏が昨日辞任の意向を示す前、すなわち総裁選が「菅vs岸田」の構図だと思われていた時、高市氏も立候補の意向を示していました。しかし、自民党総裁選に出馬するには、20名の議員の推薦が必要で、その20人を無派閥の高市氏が確保できるのかどうか、暗雲がかかっていました。彼女に近い安倍氏も菅氏を推していました。

ところが、事態が急展開を迎えた後、安倍氏は菅氏を支援する必要が無くなりました。では、安倍氏は今度は誰を総裁に推すのか、と言えば、高市氏を推すに決まっているでしょう。確かに、有力候補と言えば岸田氏や河野氏がいますが、彼らの政策は必ずしもいつも安倍氏と一致する訳ではありません。一方で、国民的にもあまり知名度は高くない高市氏ですが、彼女は前述のとおり安倍氏と政策がかなり一致する部分が多く、総裁選にも出馬しているわけですから、安倍氏にとってはこの上なく丁度いい人物なのです。

所属議員90人の最大派閥の事実上の領袖が支援するとなると、高市氏はかなりの追い風を得ると思われます。今後、高市氏が有力候補の一人として頭角を表していくことになるのだろうと、私は予測します。

一方で、実は私は自民党総裁選の動きを巡って、高市氏以外のもう一人の人物もキーパーソンとして見ています。

それが、麻生副首相です。

麻生氏は、今まで誰を支援するか名言はしていませんが、多くのメディアで同じ派閥の河野氏を支援するのではと言われています。一方で、ここ数か月、安倍氏と麻生氏は非常に緊密で、何故かと言えば、幹事長職を5年も務めている二階氏と二人とも対立関係にあったからになります。二階氏とも緊密であった菅氏が退任を表明することで、二人は団結する必要はなくなると思いますが、そうすぐに安倍麻生二氏の関係が切れるとは思えず、むしろ麻生氏は河野氏を支援せずに、むしろ安倍氏と歩調を合わせて高市氏を支援する可能性も否めません。

麻生氏が河野氏か高市氏かどちらを支援するのかが、今後の自民党総裁選の動きを占うキーポイントとなりそうです。恐らく、この後すぐ麻生氏は態度を表明するものと思われます。

短期的に見れば、現在も感染状況が深刻なCOVID-19対策は非常に重要で、政治空白が生じることは許されません。もはや失うものが無くなった菅氏には、この辞任するまでの数週間コロナ対策にしっかりと専念してもらいたいものです。一方で、今後の日本の事実上の指導者を選ぶ選挙だって、この上なく重要です。COVID-19の感染状況を注視しつつ、自民党総裁選の情勢も目が離せません。

結局この記事の題名の「問い」に対して、答えを出すとなると、「『河野―高市―岸田+石破』が軸になりそうだが、状況次第では高市氏が躍進し、河野氏が後退することもある」という結論になります。


【参考:次期総裁選の有力候補予定者の概要】

自由民主党岸田文雄前政務調査会長

派閥…宏池会(岸田派)
有力支援者…特になし
特徴…9月3日以前は、反菅の受け皿として政策構想をアピール。今後は戦略の練り直しを迫られるが、有力候補であることに変わりはない。

●河野太郎国務大臣

派閥…志公会(麻生派)
有力支援者…菅義偉首相、麻生太郎副首相?
特徴…菅政権で行政改革担当大臣に就任後は、国民からの人気が急上昇で今もそれを維持する。菅氏の不出馬を受けて出馬表明。

自由民主党石破茂元幹事長

派閥…水月会(石破派)
有力支援者…特になし
特徴…9月4日正午時点で、出馬表明は無し。当初は菅氏を支持し、立候補は無いと思われていたが、菅氏の不出馬を受けて出馬準備に取り掛かっていると思われる。

●高市早苗前総務大臣

派閥…無派閥(元は清和政策研究会)
有力支援者…安倍晋三前首相、麻生太郎副首相?
特徴…安倍氏に近い人物で、保守強硬派にも分類される。菅氏の不出馬前から出馬を表明していた。


【参考:自由民主党の派閥】(敬称略)

●清和政策研究会(通称:細田派)

領袖…細田博之
有力議員…安倍晋三、下村博文、西村康稔、稲田朋美、萩生田光一

●志公会(通称:麻生派)

領袖…麻生太郎
有力議員…山東昭子、大島理森、甘利明、河野太郎、佐藤勉、棚橋泰文

●平成研究会(通称:竹下派)

領袖…竹下亘
有力議員…額賀福志郎、茂木敏充、小渕優子、加藤勝信

●志帥会(通称:二階派)

領袖…二階俊博
有力議員…伊吹文明、中曽根弘文、河村建夫、平沢勝栄、武田良太

●宏池会(通称:岸田派)

領袖…岸田文雄
有力議員…竹本直一、根本匠、小野寺五典、平井卓也

●水月会(通称:石破派)

領袖…石破茂
有力議員…鴨下一郎、田村憲久

●近未来政治研究会(石原派)

領袖…石原伸晃
有力議員…森山裕、坂本哲志

(2021.9.4)



0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントを投稿される際は、未来ノートの「運営方針」に示してある投稿ルールを確認していただいて、それを遵守されるようお願いいたします。投稿内容によっては、管理人が削除する場合があります。

選抜記事

多数決文化との決別【未来ノートコラムA・第12回】

多数派がいつも正しいとは限らない、それはいつだって  小学校の算数の授業で、アナログ時計は一日に何回長針が短針を追い越す(=重なる)かという問題が出されたという。選択肢は、21回、22回、23回、24回、25回の5つであった。 当然ながら、答えは22回である。算数的なテクニックを...

多読記事