2021年8月6日金曜日

COVID-19ワクチン接種後の有害事象をどう考えるか【未来ノートコラムB・第3回】

今まで5回に渡って記事を書いてきた【ロゴスと情報戦】なのだが、最近書くべきことが「論理的思考」や「情報戦」に限らない、より広い分野に展開してきたので、いっそ表題を変えて、一般的な「時事評論」をするという趣旨で、【未来時事評論】とすることした。なお、回数の通し番号は「ロゴスと情報戦」からの通しで、そしてもともとあった「ロゴスと情報戦」全5回の表題は、そのままにしておくことにした。

いきなり暗い話題になってしまうのは申し訳ないが、先日8月3日、中日ドラゴンズの木下雄介投手が死去した。27歳であった。

スポニチアネックス:中日・木下雄介投手死去 27歳 7月6日練習中に倒れ意識不明に 育成からはい上がった5年目右腕

木下投手は、2016年のドラフト会議で、中日から育成1位の指名を受けて、入団した。その後、育成登録枠から支配下登録枠に昇格し、2021年の春には、開幕一軍と、祖父江投手や福投手らと並ぶ優秀な中継ぎ投手の柱として活躍することへの期待も高まっていた。更には、将来は抑え投手としても有望で、既にチームの絶対的守護神であったライデル・マルティネス投手には「打倒ライデル」といって、挑戦状を掲げていたともいう。

しかし、開幕直前に、彼は右肩を脱臼し、いわゆる「トミー・ジョン手術」という副靱帯再建手術を受けざるを得なくなった。この手術は、リハビリをして復帰するまで丸1年かかるといい、それでも彼は今季絶望であっても将来への希望を確信して、リハビリを続けていた。

そんな中での木下投手の若くしての急死は、私や木下ファン、そして中日ファン、野球ファンたちにとっては非常に衝撃的なもので、本人も無念であったろう。今となっては、ただご冥福をお祈りするしかない。

なぜこのような事になったのだろうか。

原因として推定されている1つが、COVID-19ワクチンの接種だ。木下投手は、6月28日に、中日球団の職域接種として、2軍選手枠で一斉に接種(1回目)を受けていた。その後、2回目の接種を受けるはずであったが、接種後8日後の7月6日の練習中に、突然倒れ、意識不明の状態に陥ったのだ。

COVID-19ワクチンに関しては、これまでも主にSNSを中心に、さまざまな陰謀論や懐疑論が発せられていた。この中には、「DS等の世界組織による全人類のデータ管理」「接種者から5G電波が発せられる」といったような陰謀論的な説や、学校に行っていれば誰でも虚構だと分かるようなものから、「心筋炎を引き起こす可能性がある」といった医学に携わる者からの懐疑的な意見もあり、この全てを否定することはできない。

ただ、今回の事態に関しては、7月28日の危篤報道時に、報道と同時に、専門家の声として「接種をためらわないでほしい」という意見が掲載されていた。該当する報道を下に貼っているので、そしらを参照にしていただきたい。

デイリー新潮:中日・木下雄介投手がワクチン接種後に「重篤」危機 専門家は「接種を忌避しないで」と訴え

この専門家の意見に対しては、「矛盾している」などとSNSや掲示板上で少なからずワクチン懐疑派からの反発があったようだ。従前からワクチンに関する情報はSNS上などで錯綜しており、ここで各基本的な用語について整理していきたい。

  • 治療薬…病原体(ウイルスなど)を直接攻撃するなどして、病気にかかった時にそれを治癒させる薬である。
  • ワクチン…予防薬とも呼ばれる。そもそも病原体に感染しても、それによって病気が発症しないように、健康な者に接種させる薬である。ワクチンには、弱体化させたその病原体が含まれており、そこから人体の免疫器官は、これを利用して、病原体への抗体を作り出すことが出来る。
  • 副作用…治療薬を投与したことにより、人体に与えられる望ましくない影響のこと。
  • 副反応…ワクチンを接種したことにより、人体に与えられる望ましくない影響のこと。「副作用」とは区別される。
  • 有害事象…治療薬の投与、もしくはワクチンの接種の後に起こった、人体への望ましくない現象のこと。
  • SARS-CoV-2…「新型コロナウイルス」と呼ばれる病原体自体の正式名称。「SARSコロナウイルス2型」というのが日本語表記の一種。また、「武漢肺炎ウイルス」と呼ばれることもある。
  • COVID-19…「新型コロナウイルス感染症」と呼ばれる病気の正式名称。また、「武漢肺炎」と呼ばれることもある。

これらを整理したうえで、今回の事態について考えていく。まず、木下投手の身に起こったことは、今の時点ではワクチン接種との因果関係がはっきりとしておらず、「副反応」とは断定できないので、「有害事象」と捉えるべきだ。

その上で、ワクチン接種後に亡くなられた663名(2021.2.17~2021.7.11)の方の詳しい事例を、厚生労働省がデータベース化しているが、その多くは「因果関係不明」ということになっている。重要な事は、この663名は「ワクチンの副反応により死亡」の数ではなく、「ワクチン接種後に死亡」した事例の数であり、「ワクチン接種後の有害事象」の数として捉える必要があるということだ。

残念ながら、厚生労働省のまとめている663名の事例中、660名の事例が「因果関係不明」というようになっている。そもそもワクチンの副反応かどうかを調査することが、今の医学では難しく、これがワクチンに関する情報の錯綜を招いているのだと考えられる。

しかし、今回に関しては、木下投手の死因と、このワクチン接種が何らかの因果関係を持っているのではないかと私は推測する。ただし、注意してほしいのは、私は何かしらの医学的見識を持っているわけではないということで、ただの報道からの憶測に過ぎないということを十分理解して読んでいただきたい。

実は、(知っている方もかなり多いかもしれないが)一般に「ワクチン接種後は激しい運動を控える」というのが、医学的なワクチン接種後の注意点として言われている。これはCOVID-19ワクチン以外の通常のワクチンについても言われていることで、激しい運動をすることで体の免疫力が落ち、その結果弱毒化したウイルスなのにも関わらず、人体に悪影響を与えるという事が有り得るのだ。私は、このような現象がCOVID-19ワクチン(のようなmRNAワクチン)に関しても起こり得るのだと思う。下の記事も参照してもらいたい。

ユーグレナ:ワクチン接種後に運動をしても良いの?ワクチン接種した後の注意点について解説!

木下投手の場合は、彼が野球選手という事だけあって、リハビリのための何かしらの激しい運動をせざるを得なかったのではないか。もちろん、激しい運動をした人全員が、こういった不幸な事態に見舞われるわけではないので、彼の場合は運が悪かったとしか言いようがない。

とは言え、野球選手が主に活動する夏にワクチン接種をしなければならないというのも、問題であろう。野球選手は、リハビリ途中の選手に限らず、その能力を維持するために、日々の運動は不可欠であり、特にシーズン途中の夏はそれを継続しなければならないだろう。にも関わらず、激しい運動が危険であるワクチン接種をその夏に行うというのは、選手の身を危険に晒すことに繋がる。

ワクチンを接種するために、運動を控える。感染の危険がありながらも、運動を継続させるためにワクチンを接種しない。そのどちらをとるか。安易に片方をとるわけにはいかないであろう。この件に関しては、プロ野球界、そしてスポーツ界全体で議論をすべきではないか。

「職域接種」という組織的に接種をしなければならない局面もあり、COVID-19ワクチン接種に関しては、一概に「自己責任」とは言えない。恐らく、COVID-19ワクチンが、少なからず人体に悪影響を及ぼす可能性があるという事は否定できないだろう。でもだからといって、ワクチン接種を忌避するのは、これまた失うものが多い。

どうやらこの蔓延したCOVID-19を収束させるためには、もうワクチンや治療薬の集団的な接種、あるいは投与などしか打つ手がないように見える。しかし、この「日本」という集団の中でも、一人ひとりワクチンを接種する環境や背景が異なる。そのそれぞれについて、積極的な議論が必要になるのだ。

木下雄介投手の死去、この悲しい事態からどういった考察を得られるか。ワクチンの集団接種、国民的接種は、緊急性が求められるが、その中でも正しい議論を推進し、日本人、そして人類全体の進歩へと導いていかなければならない。少なくとも、議論を経ない下手な憶測は、どのようなものであれ信用できない。

(2021.8.6)


前回:仲間を増やそう

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(2022.11.11追記)

「ロゴスと情報戦」シリーズと「未来時事ノート」シリーズ(旧「未来時事評論」シリーズ)は、「未来ノートコラム」に再編された。


1 件のコメント:

  1. 読むのが遅れてごめんなさい
    もう1年も経つ記事にコメントするわけですが、野球ファンの人などが、ワクチンについて問題意識を持ってくれていることは、とても心強く感じます
    私は、このころは、百田尚樹氏や浜田和幸氏のメルマガや、アメリカ共和党でワクチン反対のランドポール議員の発言、ボナファイダーやエポックタイムズなどに掲載されたマローン博士やモンタニエ博士などの反ワクチン派の意見などを読んだりしていた影響もあって、ワクチン副作用に対する調査をしっかりと行わない政府の怠慢について不満で、昨年は子供へのワクチン接種反対運動への署名(宮沢医師らによる)活動にも参加しました。
    この署名は今年厚労省に提出されましたが、それでも、こうした反対意見を取り上げるメディアが少ないことに、とても不満に感じています。
    今年日本で承認されたパクスロビドにしても、日本の報道では、実際に使用した人間から出された多くの不満の声がきちんと報道されず、この薬のデメリットとメリットを公平な視点で報道するメディアはとても少ないと思います
    バイデンもファウチも、この薬を投与した後、再陽性になっていて、バイデンは軽傷ではあるものの、ファウチは、再発時のコロナ症状は、一度目よりも重症化したことを告白しています
    にもかかわらず、SNSではこのファウチの発言は出回っているけれど、日本のメインストリームメディアでは、ほとんど取り上げないのは、本当に気持ちが悪いです。
    (DuckDuckGoだと出てくるニュースも、Google検索エンジンだと、デメリット報道が、ほとんど出てこない。)
    普通の頭で考えたら、ワクチンを3回うってコロナになり、パクスロビドの投与しても、再陽性が多数出て来ていれば、ワクチンもパクスロビドも「効かない」と感じるのが、人間の自然な感情だと思うのですが、ファウチにしてみたら、ワクチン否定いまさらできないのでしょうが。
    でも、世界中が、こうした「自然な感情」を語る人を封じ込めるような言論環境になってきているような気がして、とても怖いですね。
    宮沢医師や長尾和宏医師などのツイートなど全て賛同しているわけではないけれど、彼らへの言論弾圧は異様だと私は思います


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