個人的にいちばん欲しい道具の一つであるのが今回紹介する話に登場する「バリヤーポイント」。本当に滑稽な展開です。
初出:「小学三年生」1982年12月号
単行本:てんとう虫コミックス『ドラえもん』第31巻第13話
大全集:第13巻第33話
アニメ化:1983年、2016年
▲以下ネタバレ注意!
あらすじ
のび太は、ジャイアンに殴られ、犬に左足を噛まれ、車に轢かれそうになって転ぶなど、今日も様々な災難を抱えて帰宅した。それを見たドラえもんはバリヤーポイントという、持っていると半径2mの見えない壁が自分を守ってくれるという道具を一旦出してのび太に使わせようとするが、まもなく引っ込める。ドラえもんはのび太のためにならないと感じたのだ。
しかしすると部屋に野球ボールが入って来てのび太を直撃。のび太の災難の多さを見かねたドラえもんはやむなくバリヤーポイントを彼に渡す。のび太がそのボタンを押すと同時に、ドラえもんがその壁によって一気に半径2m外へ突き飛ばされた。その後、玉子が二人におやつのホットケーキを部屋に持ってくる。ドラえもんは受け取るが、のび太はバリヤーポイントのせいでケーキに手が届かない。
そこでドラえもんはのび太に「『ホ』の付くもの入れ」ということを提案する。これでホットケーキが半径2m内に入って来るのだという。そうしてのび太はケーキに有りつくことが出来たが、なお、これによってホットケーキ以外の「ホ」のつくものも入ってしまうということだそうだ。
のび太は調子に乗って本当にこれであらゆる危険から免れられるのかと思い、表へ出かけて行った。まずいつものび太の顔を見ると噛みつく犬を見つけて、それを壁で弾き飛ばす。すると今度はそこに自動車が猛スピードで突っ込んできた。それでものび太は全く無事で、逆に車の方が壊れてしまった。
それを見てのび太は完全にこれで安心だと感じ、空き地にいたジャイアンとスネ夫に会って、二人を挑発する。二人はのび太に飛び掛かろうとするが、見えない壁が逆に彼らを弾き返す。繰り返し二人はのび太を襲おうとするが、全く歯が立たない。二人は飽きてその場を去るが、今度はのび太が二人を付けて追い回し、見えない壁で後ろから突き飛ばす。二人は石を投げて応戦するが、これも全て突き返される。仕方なく、ゲームを譲り渡して許しを請うこととなった。のび太は「『ゲ』の付くもの入れ」と言って、ゲームを手に入れる。
その様子をタケコプターで上空から見ていたドラえもんは、さすがに返すよう言うが、無敵ののび太は無視。ドラえもんは警告するが、まもなく雨に降られて敢え無く退散ということになった。雨が降ってもバリヤーが水から自分を守ってくれるのに感心するのび太。突然の雨に立ち往生するしずかを見つけると、「『シ』の付くもの入れ」と一言いい、家まで送ってあげた。
しかしその様子を密かに観察していたジャイアンとスネ夫は、バリヤーの仕組みを暴き、早速のび太に「ジャンボーグX」と「すっとびけん太」という漫画を見せる。のび太は「『ジャ』と『ス』の付くもの入れ」と言ってしまったために、ジャイアンとスネ夫にバリヤーを破られ、痛い復讐を受けることになった。
考察
この道具は外で使うには非常に有効で、おまけに傘代わりにもなるようだ。でも、部屋の中で使うとなると、やはり作中冒頭ののび太のように不便なところは多そうだ。だって、家の中に半径2mの球体がすっぽり収まるところがあるかという話なのだ。家のドアの幅は1mしかないのに、のび太はバリヤーポイントを付けたままここを通り抜けたのかという疑問もある。バリヤーポイントは床や地面は当然弾き飛ばす対象外だが、それが壁や塀も同じなのだろうか。
あと、そう言えば思ったのだが、バリヤーポイントを付けている人がいる地面の下に潜り込んで、そこから地上のバリヤー内に顔を出して、その人を襲うとか言う手段はないのかと。ただ、その場合は地中でつっかえてしまうのだろうか。ともかくいろいろ考える余地がある。
この道具の欠陥としては、やはり入るのを許す物体を、その頭文字でしか指定できないところだ。のび太は「ゲ」の付くものを、ゲンゴロウだとか月曜日だとか簡単に言って大丈夫そうだと判断しているが、例えばゲジゲジとか劇物とかが飛んでくればのび太に降りかかってしまう危険がある。さらに、入るのを許すのを取り消す手段がないということは、この道具は使い捨てなのだろうかとも考えられる。
2016年のアニメ化では、最後のオチに捻りが加えられていて、のび太が「ジャムパン」と「すき焼き」の罠に気づくという描写があった。ただしその後、「ゴロゴロコミック最新号」と「星野すみれの直筆サイン」を許したことにより、「ごうだたけし」と「ほねかわすねお」を入れてしまうという、結局原作と変わらない不器用さを見せつけることとなった。なお、このために冒頭でのび太たちに出されるおやつは「ホットケーキ」からただの「ケーキ」に変わっていた。
このように、この作品はアニメ化のしようによっては多様に面白くアレンジできるなと思う。今後のわさドラでのリメイクにも期待しているところだ。
(2022.8.23)
次回:未定
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